優れたSFは哲学となる【映画】「メッセージ」


日野店スタッフ「Y」です。今回は10月17日にリリースされた映画「メッセージ」をオススメします。

本作は「世界各地に謎の宇宙船が現れ、その中にいる知的生命体と意思の疎通を行うために、主人公である言語学者が派遣される……」という、いわゆる「ファースト・コンタクト」ものなSF映画です。

正直、派手な作風ではありませんが、言語の構造的混乱や、都市伝説の「カンガルーの名前の由来」なんかを織り交ぜた言語学的な知見により物語が進むのがとてもスリリングで面白いです。

言語の構造的な混乱とは、例えば英単語の「overlook」は「監視する」と「見逃す」というまったく反対な意味を持っていたりするようなことです。日本語でも「名誉回復」では良いものを回復するのに、「疲労回復」では悪いものを無くす意味で「回復」が使われていますね。

また、「カンガルーの名前」は、西洋人が初めてオーストラリア大陸に上陸した時に、現地人にカンガルーを示して「あの動物は名前は?」と尋ねると、現地人は西洋人の言葉が理解できないため、「(何を言っているのか)わからない」という意味で「カンガルー」と答えたが、尋ねた側は「あの動物はカンガルーという名前」と誤解してしまい、これがこの動物の通称となった、という俗説があります。

こうした言葉でのコミュニケーションの難しさ中で解き明かされる地球外生命体の「メッセージ」は一体何なのか? 意思や情報を「知る」とはどういったものなのか? この作品ではそれが問われます。そして最後に主人公がたどり着く結論は、たぶん人によって賛否が大きく分かれることでしょう。

優れたSFは本作のように哲学的な問いかけを試みます。有名なところでは古典SFの「冷たい方程式」、映画では「2001年 宇宙の旅」や「インターステラー」などが挙げられます。時々そんな作品を観て、脳のいつも使わない部分を動かしてみるのも楽しいですよ。

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