DEEP RIVER
「深い河」(1993)著:遠藤周作
こんにちは、ウェブ担当です。
今回はやや趣向を変えて、本の紹介をしてみたいと思います。
僕は、人並み程度(またはそれ以下)にしか本を読まないのですが、以前知人に薦められて読んだ、この「深い河」が僕の生涯の一冊になりました。
これを著した遠藤周作という人は、「日本人とキリスト教」という、ややもすると取っ付きにくいテーマで多くの作品を手がけてはいるものの、純文学としてのクオリティの高さゆえ、それを超越した名作を多く残した作家です。
この「深い河」も例にもれず、宗教的な要素が大いに含まれています。もちろん、宗教や信仰に関して全く無頓着な僕ですら入り込めるような、一級のポピュラリティを内包していますのでご安心を。
物語の中で、様々な業(カルマ)を抱えた人間たちがインドの母なる河ガンジスを目指します。あるものは転生を願い、あるものは浄化を欲し、そしてあるものは生死を超えた人生の意味を理解すべく、それぞれの胸に超えねばならないであろう己の業を抱えて。
上流では死者を流し、その河辺で人々は食べ物を洗い、子どもたちは水遊びをする……。ガンジスは、善も悪も、生も死も、すべてを包み飲み込む存在であり、そしてまたインドの人々の生活、日常でもあるのです。
この混沌の中にこそ見出す真実がある、とすら聞こえてきます。
身近でありながら崇高で、そしてただ静かなガンジスに身を委ねたい、と望むのは必然なのかもしれません。そこに漂うことで人々は自分の存在理由を思い知ることになるのですから……。
この「深い河」は、秋吉久美子、奥田瑛二らのキャストで映画化されています。残念なことに現在のところDVD化はされていないようです。ただし、以前 VHS では流通しており、やもすればなんとか手に入るかもしれません。
もし、この本を読んで興味を持たれたならば、ぜひ探してみてください。映画のほうも納得の完成度でしたので。
因みに、歌手の宇多田ヒカルが彼女らしい解釈でこの作品を楽曲にしたのが、「DEEP RIVER」です。もちろん、名曲です。
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