太平洋戦争の大空襲を描く コミック「夏のあらし!」
日野店スタッフ「Y」です。本日はおすすめなコミック「夏のあらし!」/ 小林尽 [スクウェア・エニックス](全8巻)を、ご紹介します。
この作品は、現代の中学生の少年と、太平洋戦争の辛い記憶を引きずりながら夏の間だけ過去と現在を行き来する幽霊の少女とのラブコメものです。全8巻のうちの7割は、いかにも漫画チックなラブコメが占めますが、ある目的を達するために横浜大空襲があった時刻にタイムスリップする終盤は、一気に物語が重厚になります。
当時の資料や、戦争体験者の方々へのインタビューなどを元にして、非軍事施設を標的とした大規模空爆の凄惨な状況が描かれている様は、読者に戦火の恐怖を激烈に突きつけます。
当時の資料や、戦争体験者の方々へのインタビューなどを元にして、非軍事施設を標的とした大規模空爆の凄惨な状況が描かれている様は、読者に戦火の恐怖を激烈に突きつけます。
また、単に反戦を唱えるだけでなく、詳しく言及される場面は少ないながらも、比較的中立な視点で太平洋戦争の一部を描こうとしていることも、大いに評価したいところです。0
確かに描かれていることの全てが完璧に正しいわけではないとは思います。例えば軽めなところを挙げると、太平洋戦争のことを日本側の呼称である「大東亜戦争」と統一表記しているのに、硫黄島を正しい日本読みの「いおうとう」ではなく、アメリカ側読みの「いおうじま」と表記していたりしています(実はこれも厳密に言うとちょっと違います。気になる方は、当時の日本陸軍と海軍での硫黄島の扱いの違いについて調べてみると、意外な歴史の一端に触れることができると思います)。
それでも、戦後教育で自虐史観をなんとなく鵜呑みにしてしまった、戦争を本当には知らない私たちにとって、この作品は十分に有意義な問題提起をもたらしてくれることでしょう。
それでも、戦後教育で自虐史観をなんとなく鵜呑みにしてしまった、戦争を本当には知らない私たちにとって、この作品は十分に有意義な問題提起をもたらしてくれることでしょう。
そう、このコミックのタイトル「夏のあらし!」は、夏の間だけ幽霊になれるヒロインの嵐山小夜子と因んでいるだけではなく、私たちが忘れてはならない、67年前の夏のことを表してもいるのです。
戦争を知らない私たちだからこそ、かつての夏のことを少しずつでも勉強して、より良い未来を築いていきたいものですね。
前半のラブコメ部分が強いので、残念ながら文化庁推薦図書って感じではありませんが、そのラブコメ部分もそれなりに良いジュブナイル・ストーリーに仕上がっていますよ。
と言うことで、この作品は全8巻の一気読みをオススメします。
と言うことで、この作品は全8巻の一気読みをオススメします。
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