映画「キャビン」はキング・オブ・B級映画!!


日野店スタッフ「Y」です。今回は、観終わった後に思わず拍手をしたくなった映画「キャビン」についてご紹介します。

あらすじは「男女5人の大学生が、週末を楽しく過ごそうと郊外の森の中にある古びたキャビンに訪れたところ、そこで恐怖に巻きこまれてしまう。そしてその惨劇をハイテク機器に囲まれた管制室で監視する者たちがいた。この者たちの正体は? そして学生達は恐怖から逃れることができるのか?」といったものです。

このようなメタ視的ストーリーは、最近のシチュエーション・スリラーもので時折見かけるものですが、なかでもこの「キャビン」の特徴は、そのベタ要素の徹底さにあります。

バカ騒ぎするリア充学生たちが訪れるキャビンの不穏な寂れっぷりと、その地下室で見つける謎のラテン語の呪文が書かれた日記帳は「死霊のはらわた」、水着になって戯れる森の湖畔はもちろん「13日の金曜日」のクリスタルレイクが、それぞれネタ元ですが、これら次から次に登場する古典ホラー映画のお約束要素は、全て謎の監視集団によって完璧に構築されていた舞台と小道具なのです。

また物語の冒頭から、この謎の集団が世界中にあり、各国で同じく恐怖の舞台を整えて犠牲者をそれぞれ監視していることが明かされます。もちろん日本にもそれはあり、中学校の教室に現れた幽霊から逃げ惑う少女達の映像が管制室のモニターに映し出されます(この時、謎の集団の1人がつぶやく「日本のチームの成功率は100%だ」と台詞も興味深いものです)。

つまり、今まで私たちが観てきたホラー映画全てが彼らによって仕組まれた物語ではないのかという、とんでもない大風呂敷な懸念を観客に否応なく想起させるのです。

そんな有象無象のホラー映画要素が、これまた愛情たっぷりに連発されていきます。まさに「オマージュ」。特濃なオマージュです。やたらめったら鳴り響く、いかにもな効果音。もう分かったからと諫めたくなる不穏なカメラワーク。ワケの分からないところで唐突に表示される、低予算チックで雑なオープニング・ロゴなどなど。5分に1回ニヤつけるベタ演出に充ち満ちています。

加えて、謎の監視集団のスタッフたちのゆるいことゆるいこと。「楽な仕事じゃないから」と被害者たちの惨劇を賭け事にしたり、いちゃつくカップルの映像を写すモニターに覗き魔根性丸出しでかぶりついたりと、やりたい放題です。

謎の集団スタッフのうち、特に2人のおっさんが非常に愛すべきキャラクターとして描かれているため、映画を観ているうちに、惨状から必死に生き残ろうとする被害者グループと、それを逃がさないようにあの手この手で恐怖を演出しようと慌てる謎の集団の、その両方を応援してしまう不思議な感覚に囚われます。さて、最後はどちらが勝利するのか? そもそも勝利ってなに?
(犠牲者がどんな被害に遭うのかの賭けボード。狼男やエイリアンなどの文字があります)

といった感じで、この映画はジャンル的にはホラーにカテゴライズされますし、かなりなゴア表現があるものの、全く怖くありません。メインテーマは「怖がらせる」ではなく、「怖がらせることというもの」なのです。そういう意味では、映画「スクリーム」シリーズが、古典ホラー映画のフォーマットを使ってより怖いものを作っていった趣向とは真逆な方向といえるかも知れません。

ですので、この映画は観ながら突っ込みを入れてニヤニヤ笑いながら楽しめる作品となっています。でも、最後まで突っ込みきれるかどうかは、また別のお話し。そんなに甘くないかもですよ?

では、最後にこの映画の予告動画をご紹介……しようと思ったのですが、この公式サイトの予告動画は、完全にネタバレしてしまっています。そんな動画は見ない方がきっと楽しめますので、ご鑑賞前のネット検索は控えることをオススメします。