時間よ止まれ


日野店スタッフ「Y」です。本日はおすすめなコミック「刻刻」/ 堀尾省太 [講談社]を、ご紹介いたします。
「刻刻」は、主人公が家族を誘拐され、要求された多額の身代金受け渡し時刻まで猶予がなく切羽詰ったところ、主人公の祖父に時間を止める方法を知らされ、時が止まった世界に突入するものの、そこで自分たち以外にも動ける謎の団体に遭遇する、という内容のSFサスペンス作品です。
さて、「時間が止まる」というテーマの作品は洋の東西を問わずいくつかありますが、「刻刻」は凡百な作品群とは一線を画する様々な魅力を持っています。それらの魅力のうちの1つが、その設定のリアルさです。

例えば時が止まった世界で登場人物がこうつぶやきます。「わからんのは空気の摩擦と重力だよ」

そう、森羅万象が静止しているのならば、常に流動している大気も静止しているので、その摩擦力や抵抗は非常に大きくなると思われますが、これに言及できた時間停止ものはそう多くはないと思います。

いや、重箱の隅を突き始めると、大気中の分子の動きが止まったら気圧がどーのとか、光子の動きも止まれば何も見えないだろーとか、いくらでも科学的な矛盾点を挙げへつらうことが可能ですが、フィクションである以上、それを言っては詮無きことです。

しかしそんなフィクションでも、わけてもSFにおいては、現実とは異なる言わば「反則」をどれだけ少なくできるか、そして厳しい制限の中でどれだけ話しを転がすことができるかが面白さを決める大要因となります(ちなみにこれを追求するジャンルを「ハードSF」と呼びます)。

「刻刻」はその反則の使い方のバランスがとても上手なエンターテイメント作品となっているのです。
ところで、みなさんは時間を止められたらどうしますか?
はい、今みなさんの頭の中に浮かんだ正直な妄想、私もまったく同じでございますよ。

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